2012.11.10更新

 センターラインのある道路で自転車の進行方向に向かって右側の車線を走行してきた自転車と、対向方向から同車線を走行してきた自動車が正面衝突したという事故の過失割合を調べてみた。つまり、道路右側を逆走してきた自転車とまともに左側車線を走行してきた自動車の事故の過失割合である。
 交通事故の過失割合については、別冊判例タイムズの「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」が最も信頼性のある基準である。東京地方裁判所の交通部の裁判官が構成する東京地裁民事交通訴訟研究会がこれを編纂している。
 この基準の最新のものは平成16年に発行された全訂4版であるが、これによれば、逆走自転車と自動車の衝突事故の過失割合は、自転車20に対して自動車80である。正直、私はびっくりした。逆走自転車の過失割合が余りにも小さく、まともに走行してきた自動車の過失割合が大き過ぎると感じたのである。一般に、自転車は交通弱者との考え方から、自動車との事故における自転車の過失割合は、自動車対自動車の事故の場合よりも小さく判断される。そのこと自体はよく理解できる。しかし、逆走自転車が20%の過失割合というのは、衝突した自動車に少し酷ではないだろうか。
 ちなみに、別冊判例タイムズの「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」の全訂3版を見てみると、同じ類型の事故について、自転車の過失割合は50%とされている。4版においてこれが20%に改められたことになるが、その理由は不明である。一般的な感覚では50%の方が納得しやすいのではないだろうか。

投稿者: 柏木幹正法律事務所