2013.02.20更新

 時間外労働について割増賃金(いわゆる残業手当)を支払わなければならないことは労働基準法37条に定められていまるが、これを支払わない使用者が未だに多いようで、最近、時間外労働の割増賃金の請求に関する相談が増えている。
 最近の相談事例で、時間外労働時間をカウントする際に宿直時間をどうするか、ということが問題になったケースがあった。相談者は旅館の従業員で、定期的に宿直勤務があった。
 労働基準法41条には、「監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政庁の許可を受けたもの」については労働時間等に関する労働基準法の規定を適用しない、と定められている。宿直勤務は、この「監視又は断続的労働」に該当する。従って、宿直勤務については、労働基準監督署の許可を得ている場合に限り、割増賃金を支払う必要がない。逆に言えば、使用者が労働基準監督署の許可を得ていなければ、宿直時間についても時間外労働の割増賃金を請求できることになる。
 これに関する労働基準監督署の許可基準が定められている。許可基準の概略は次のとおり。
1 勤務態様
 ① 常態として、ほとんど労働する必要のない勤務(例えば、定期的巡視、緊急の文書又は電話の応対、非常事態に備えての待機等に限る
 ② 原則として、通常の労働の継続は許可しない(始業又は終業に密着した時間帯については許可しない)
2 宿直手当
  その事業所において宿直勤務に就くことを予定されている同種労働者の割増賃金の基礎金額の3分の1を下らない金額の宿直手当が支給されなければるならない。
3 回数
  週1回を限度とする。


 相談のケースは、使用者が労働基準監督署の許可体を受けていなかったケース。このようなケースでは、時間外労働割増賃金の金額が思わぬ多額になることがあるので、従業員は時間外労働時間のカウントの際に宿直時間のカウントを欠かさないこと。
 逆に使用者側は、宿直についての規則を整備し、労働基準監督署の許可を得ておくことが肝心である。

投稿者: 柏木幹正法律事務所